散歩から帰ってきて、ふと思った。「今日もうちの豆柴が行きたい方に歩いてたな」と。
先にひとつだけ。分岐点で愛犬がリードを引っ張る方についていくのは、実は理にかなっている。犬は嗅覚で周囲の情報を集めながら歩いていて、ルート選びにもちゃんと理由があるらしい。無理に引き戻すよりも、安全な範囲でついていくほうがお互いストレスが少ない。
分岐点で決めてるのは、だいたいうちの豆柴
うちの豆柴と散歩していると、十字路や分かれ道にさしかかるたびにリードが「こっち」と引っ張られる。
別に踏ん張るわけではない。ほんの少しだけ、行きたい方向にリードのテンションがかかる。こちらは、ほぼ毎回それについていく。
たまに「今日はあっちに行ってみようかな」と反対方向に歩き出すと、数歩で振り返られる。「え、そっち?」みたいな顔で。何回かそのまま押し通そうとしたけれど、結局うちの豆柴が行きたがっていた方に戻った。何度もある。
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学が、GPS82万データポイントを使って犬の散歩行動を分析している(PLOS Computational Biology, 2014)。それによると、犬は散歩中の50〜85%の時間でリーダー役を担っていたそうだ。散歩の大半は犬が前を歩き、人間がついていっている。うちだけじゃなかったのかと、ちょっと安心した。
同じ道なのに毎回立ち止まるポイントがある
うちの豆柴は、散歩コースが日によって変わる。同じルートを要求されることはあまりなくて、朝と夕方でも行きたい方向が違う。
ただし、どのルートを歩いても「必ず立ち止まる植え込み」がある。毎回おしっこをする定番スポット。他の犬のマーキングが残っているのだろう。念入りにクンクンしてから、自分の分を上書きする。もはや儀式だ。
犬にとって電柱や植え込みのクンクンは「地図を読んでいる」ようなものらしい。犬は歩きながら足裏の臭腺で自分の匂いの軌跡を残し、他の犬の軌跡もたどれるという研究がある(Nature: Scientific Reports, 2020)。他の犬がいつ通ったか、オスかメスか。人間がSNSのタイムラインをスクロールするように、犬は同じ散歩道の匂いを毎日チェックしている。コースが同じでも匂いは毎日アップデートされるから、犬にとっては毎回新しい道なのだ。
ルートが日替わりなのも、その日の「気になる情報」がある方角に向かっているだけなのかもしれない。
柴犬の「やわらかい主張」がいちばん厄介
拒否柴のように座り込んで動かなくなる柴犬もいるけれど、うちの豆柴はそこまで激しくない。リードにほんの少し圧をかけて、行きたい方向をさりげなく伝えてくる。やわらかいのだ。やわらかいからこそ、こちらも気づかないうちに従ってしまう。
リードの張力を計測した研究でも、犬が行きたい方向に微妙に引っ張り、飼い主が無意識にそれに応じるパターンが確認されている(Animals (MDPI), 2020)。
しかも柴犬は、困った場面で飼い主の顔を見る回数が他の犬種より少ないらしい。ラブラドールが「どうする?」とアイコンタクトを求めるところを、柴犬は自分で考えて自分で決める。散歩のルート選びもきっと同じだ。「こっちに行きたい」と主張しているのではなく、もう自分で決めてさっさと歩き始めている。飼い主はその決定に、あとからついていっているだけ。
うちの豆柴のマイルールは他にもいろいろあるけれど、散歩のルート選びがいちばんわかりやすい。振り返ってみると、ここ数年の散歩コースはほぼ全部、うちの豆柴が決めていた気がする。
散歩させてるつもりで、散歩させられていた
正直、それでいいと思っている。
リードを持っている以上、安全管理は飼い主の仕事だ。車が来る道、他の犬とのすれ違い、危険なものが落ちていないか。そこさえ押さえておけば、どっちに曲がるかなんて犬に任せたほうがお互い楽しい。
今日も玄関を出た瞬間、うちの豆柴がスッと左に歩き出した。右に行こうかなと思っていたけれど、まあいいか。ついていこう。
