散歩中、ふと視線を感じることがある。振り向くと、外国の方がうちの豆柴をじーっと見ている。声はかけてこない。ただ、目が完全にロックオンされている。
先にポイントだけ。いま柴犬はアメリカで急激に人気が上昇中で、AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)の2024年登録ランキングでは42位。20年前の66位から24ランクも上がった。あのDogeミームとイーロン・マスクの影響が大きいのだけど、理由を調べてみたらそれだけじゃなかった。
散歩中の「あの視線」の正体
はじめは気のせいだと思っていた。でも本当にたまに、公園で外国の方がうちの豆柴をじっと見ていることがある。
声をかけてくるわけじゃない。写真を撮るわけでもない。ただ見てる。あの「あ、Shibaだ……」という表情は、犬好きならわかると思う。自分も他の犬種でやったことがある。
Instagramに豆柴の写真を上げていると、海外からフォローされることがある。コメントはつかない。でもフォローはくる。この距離感、なんだか柴距離に似ている。好きだけど、べたべたはしない。柴犬が海外の人にも柴距離を教えているのかもしれない。
Dogeミームが変えた「柴犬の立ち位置」
海外で柴犬の知名度が爆発したきっかけは、間違いなくDogeミームだ。
2010年、千葉県の幼稚園教諭・佐藤敦子さんが飼っていた赤柴「かぼすちゃん」の写真がブログに投稿された。ソファに座って横目でカメラを見るあの表情。2013年にこの写真に「such wow」「very amaze」という片言英語がつけられてTumblrやRedditで大拡散し、その年のインターネットを代表するミームになった。
同じ2013年にはDogeミームをモチーフにした暗号通貨「Dogecoin」も誕生。ここからが柴犬の運命を変えた部分で、2021年にイーロン・マスクが自らを「The Dogefather」と名乗りSNLに出演すると、Dogecoinは史上最高値を記録。さらにマスクは同年9月、本物の柴犬の子犬を迎えて「Floki」と名づけ、写真を投稿した。
つまり世界一の富豪が「柴犬、飼います」と宣言したわけだ。これでアメリカの柴犬人気に火がつかないわけがない。
ちなみにかぼすちゃんは2024年5月に18歳で亡くなった。パピーミル出身で殺処分寸前だったところを保護団体に救われた子だった。千葉県佐倉市にはモニュメントも設置されている。1匹の柴犬が世界のインターネット文化を変えたと思うと、ちょっとすごい。
データで見る「柴犬、アメリカで急上昇中」
AKCの公式データを見ると、柴犬の人気上昇は数字にもはっきり出ている。
| 年 | AKCランキング | 備考 |
|---|---|---|
| 1992年 | — | AKCが柴犬を正式認定 |
| 2004年 | 66位 | 当時はまだマイナー犬種 |
| 2024年 | 42位 | 20年で24ランク上昇 |
1954年にアメリカ軍人の家族が初めて柴犬を米国に持ち込んでから約70年。じわじわと、でも確実に存在感を増している。
海外で柴犬が「刺さる」理由として、よく挙げられるのがこの3つだ。
独立心が強くて猫っぽい。 欧米では犬は従順であるべきという価値観が根強い。そこに「呼んでも来ない」「撫でようとすると避ける」という柴犬が現れた。海外の柴犬コミュニティでは「cat-like dog(猫っぽい犬)」という表現がよく使われている。うちの豆柴も猫っぽいところが多い。
表情が豊かでSNS映えする。 柴スマイル、飛行機耳、拒否柴の顔芸。どれもスマホで撮って投稿したくなる絵力がある。ミーム文化との相性が抜群にいい。
都市部のアパートでも飼いやすいサイズ。 中型犬としてはコンパクトで、マンション暮らしにも適応できる。ニューヨークやロサンゼルスのような大都市で飼う人が増えている。
アメリカだけじゃない、アジアでも柴犬ブーム
柴犬人気はアメリカに限った話ではない。
台湾では2014年頃から柴犬が大流行。日本文化への親和性が高い台湾で、メディアで見た柴犬に惹かれる人が増えた。コンパクトな体格がアパート中心の都市生活に合うのも理由のひとつだ。
シンガポールでは「The Darling of Singapore(シンガポールのアイドル犬)」と呼ばれるほど。ヨーロッパでもオランダやベルギーを中心に愛好家が増えている。
日本では当たり前すぎて気づかないけれど、柴犬は世界的に見るとかなり特別な犬種なのだ。オオカミに最も近い遺伝子を持つ古代犬種という事実も、犬好きの心をくすぐるポイントなのかもしれない。
まとめ:柴犬は黙って世界を征服している
散歩中に外国の方に見られるたびに思う。この子、自分が世界的に注目されてることをたぶん知らない。知ったところで興味もないだろう。
Dogeミームで火がつき、イーロン・マスクが飼い始め、AKCのランキングは20年で24ランク上昇。台湾やシンガポールでもアイドル扱い。それでもうちの豆柴は今日も散歩中に拒否柴を発動し、帰宅後はへそ天で寝ている。
世界がどれだけ騒いでも、マイペースを貫く。それが柴犬だし、たぶんそこが好かれている理由でもある。
