犬の「うるうる目」は1万年かけて進化した|柴犬のおねだり顔の正体

胡麻柴がおやつを見上げてうるうる目をし��いる

うちの豆柴がおやつの前でちょこんと座って、あの目で見上げてくる。あの「うるうる目」、飼い主の心臓を正確に撃ち抜いてくるやつだ。先にポイントだけ。あの表情は犬が1万年以上かけて進化させた「人間専用の顔」で、オオカミにはできない。つまり、我々はまんまとやられている。

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あの「うるうる目」はオオカミにはできない

2019年、イギリスのポーツマス大学を中心とした研究チームがアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した論文が、犬好きの間で話題になった。

犬の目の周りには「内側眉毛挙筋(LAOM)」という小さな筋肉がある。眉の内側をキュッと持ち上げて、目を大きく丸く見せる筋肉だ。

研究チームが犬とオオカミの顔の解剖を比較したところ、この筋肉は犬にはしっかり発達しているのに、オオカミにはほとんど存在しなかった。

つまり、犬は人間と暮らすようになってから1万年以上の時間をかけて、「目を大きく見せる専用の筋肉」を進化させていた。人間の赤ちゃんを見ると「守ってあげたい」と思うのと同じ原理で、眉を上げて目を丸くすることで、こちらの心を掴むようにできている。

我々飼い主が毎回あの顔に負けるのは、意志が弱いからではない。1万年かけて最適化されたシステムに挑んでいるのだから、勝てるわけがない。

柴犬のおねだり技は「うるうる目」だけじゃない

うちの豆柴の場合、うるうる目はあくまで基本装備だ。実際のおねだりはもっと手が込んでいる。

まず、おやつの気配を察知した瞬間にちょこんと座る。「お座りしてますけど?」という顔で見上げてくる。この時点でもう目がうるうるしている。

それでもこちらが動かないと、次に出てくるのが柴タッチだ。前足でちょんちょんとこちらの腕を叩いてくる。「あの、聞こえてます?」とでも言いたげな控えめさがまた憎い。

さらに無視を続けると、最終兵器が発動する。鼻先でこちらの腕をぐいっと持ち上げてくるのだ。もはや控えめさは消え去り、「はい、手を動かして」と物理的に要求してくる。

この3段階を全部やられて耐えられる人間がいたら会ってみたい。

うちでは夫婦どちらにも平等に仕掛けてくるので、片方が断っても、もう片方に同じ手順を最初からやり直す。しかも誰がおやつをくれやすいかをちゃんと覚えていて、成功率の高いほうから先に攻める日もある。学習能力が高いのか、人間のことをよく見ているのか。たぶん両方だ。

ちなみにこのおねだり3段構成、おやつ以外でも発動する。散歩に行きたいとき、ソファに上がりたいとき、なぜか決まった時間にやってくる「構ってタイム」。どの場面でも手順は同じだ。座る→柴タッチ→鼻先リフト。うちの豆柴にとって、これが人間を動かす最適解なのだろう。

人間が「かわいい」と感じるのも進化の結果

犬がうるうる目を進化させたのなら、人間の側にも仕掛けがある。

人間は丸くて大きな目を見ると、脳内でオキシトシン(愛着ホルモン)が分泌される。赤ちゃんを見て「かわいい」と感じるのと同じ反応だ。犬のうるうる目はまさにこの反応を狙い撃ちしている。

2015年に麻布大学の研究チームがScience誌に発表した研究では、犬と飼い主が見つめ合うと双方のオキシトシン濃度が上昇することが確認されている。見つめ合うだけでお互いの愛着が深まるという、犬と人間だけに成立する特別なループだ。

オオカミと人間の間ではこの反応は起きなかったという。

つまり、犬は「かわいい顔をする筋肉」を進化させ、人間は「かわいい顔を見ると幸せになる仕組み」を持っている。1万年かけてお互いにチューニングし合った結果が、今リビングで繰り広げられている「おやつちょうだい攻防戦」だ。

普段は柴距離を保ってクールなくせに、おやつの前ではフル稼働でうるうるしてくる。あのギャップもまた、進化の産物なのかもしれない。

柴犬は古代犬種だから、進化の証人かもしれない

柴犬はDNA的にオオカミに最も近い犬種グループのひとつとされている。つまり、家畜化の初期段階に分岐した「古い犬」だ。

ポーツマス大学の研究では、犬種ごとのLAOM(眉毛の筋肉)の発達度合いまでは詳しく比較されていない。ただ、柴犬が「古い犬」であることを考えると、この表情筋はかなり早い段階から備わっていた可能性がある。

何千年も前から、あの目で人間を手なずけてきたのかもしれない。

面白いのは、柴犬は普段あまり感情を表に出さないタイプだということだ。マイペースで自分のルールを大切にする犬種が、おやつの前では全力で目をうるうるさせる。

普段のクールさを知っているからこそ、あのギャップに飼い主はやられてしまう。

ヒコーキ耳とうるうる目が同時に発動したときの破壊力は、言葉では説明できない。耳がペタンと倒れて、目がまんまるになって、ちょこんと座ってこっちを見上げている。あれはもう進化がたどり着いた完成形だと思う。

まとめ

犬のうるうる目は、1万年以上かけて進化した「人間の心を動かす専用の表情」だった。オオカミにはない筋肉を発達させ、人間のオキシトシン反応を正確に撃ち抜く。

そしてうちの豆柴はさらにその上を行く。うるうる目で基礎攻撃、柴タッチで牽制、鼻先リフトで強制発動。この3コンボの前に、我が家の「おやつは決まった時間だけ」ルールは毎回なし崩しになっている。まあ、1万年の進化に勝てないのだから仕方がない。

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この記事を書いた人

3歳の柴犬オーナー歴。愛犬を溺愛中。柴犬との暮らしで感じるリアルな「あるある」と、飼い主目線で調べた役立つ情報を発信します。モットーは「柴犬のことは柴犬オーナーが一番わかる」。

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