うちの豆柴を見ていると、たまに思うことがある。
この子、野生のかけらもないな。
雷が鳴れば膝の上に飛び乗ってくる。掃除機が動けばビビって怒る。ドッグランでは元気いっぱいの大型犬にドーンとぶつかられて、しばらくフリーズしていた。
そんな豆柴に、ある日とんでもない事実を突きつけられた。
柴犬は、遺伝子レベルでオオカミに最も近い犬種グループの一つだった。
いやいや。うちの子、オオカミどころかチワワにもビビってたけど?
柴犬は「古代犬種」だった
ざっくり言うと、こういうことだ。
2004年、アメリカの研究チームが85犬種のDNAを調べた。すると、ほとんどの犬種は200年くらい前にヨーロッパで「こういう犬がほしい」と人間が掛け合わせてつくった”デザイナーズ犬種”だったのに対して、ほんの十数種だけ、そういう品種改良をほとんど受けていない犬種が見つかった。
それが「古代犬種」。オオカミの遺伝子に近いまま、何千年もほぼそのまま生き延びてきた犬たちだ。
で、そのメンバーがこちら。
| 古代犬種 | どこの出身? |
|---|---|
| 柴犬 | 日本 |
| 秋田犬 | 日本 |
| チャウ・チャウ | 中国 |
| シャー・ペイ | 中国 |
| バセンジー | アフリカ |
| サルーキ | 中東 |
| アフガン・ハウンド | 中東 |
| サモエド | シベリア |
| シベリアン・ハスキー | シベリア |
| アラスカン・マラミュート | 北極圏 |
日本からは柴犬と秋田犬だけ。豆柴も血統上は柴犬だから、うちの子もこのエリート集団の一員ということになる。
つまりあの子は、ゴールデン・レトリバーやプードルよりもオオカミに近い。
……のに、今この瞬間、毛布にくるまって丸くなって寝ている。
うちのオオカミの日常
オオカミの血を引いてるなら、もっと勇敢で、もっと孤高で、もっと「一匹狼」感があっていいはずだ。
でも現実のうちの豆柴は、こうだ。
- 掃除機に向かってガウガウ。でも近づいてくるとダッシュで逃げる
- 雷が鳴ると膝の上から降りない
- 知らない犬には柴距離どころか完全撤退
- 留守番中、ペットカメラで見るとずっとお座りで玄関を見つめている
- 帰宅すると飛行機耳全開でお迎えにくる
これのどこがオオカミなのか。
でも実は、矛盾していない。
「古代犬種」は「オオカミと同じ性格」という意味じゃない。「人間が品種改良で性格をいじっていない、原型のまま」ということだ。
ゴールデン・レトリバーが誰にでもフレンドリーなのは、そう品種改良されたから。柴犬のツンデレ気質も、拒否柴でテコでも動かないのも、「人間に従いやすく」調整されていない証拠とも言える。
ビビりで寂しがりなのは、遺伝子が壊れたわけじゃない。何千年も人間と群れで暮らすうちに、「この群れ(=家族)は信頼していい」と覚えた子が甘えん坊になっただけ。遺伝子の骨格はオオカミ時代のまま、心は家族にべったり。
格好つけたいのに甘えちゃう。このギャップこそが柴犬だと思う。
オオカミの遺伝子、2017年にも再確認
ちなみにこの研究、2017年に同じチームがさらに大規模にアップデートしている。161犬種・938頭を調べた結果でも、柴犬を含むアジアの犬たちは「最も早くに枝分かれした古い系統」として確認された。
20年近く研究が続いても、柴犬の「最古参」のポジションは揺らいでいない。
海外で柴犬が「Doge」として爆発的に愛されたのも、どこかこの「太古からの犬」が放つ独特のオーラを、世界の人が感じ取っているのかもしれない。
まとめ
うちの豆柴は、遺伝子的にはオオカミの仲間。でも実態は、掃除機にビビって怒り、留守番中はずっと玄関を見つめ、帰れば飛行機耳で走ってくる寂しがりだ。
遺伝子はオオカミ。でも心は、完全にうちの子。
参考文献
- Parker, H.G. et al. (2004). “Genetic Structure of the Purebred Domestic Dog.” Science, 304(5674), 1160-1164.
- Parker, H.G. et al. (2017). “Genomic Analyses Reveal the Influence of Geographic Origin, Migration, and Hybridization on Modern Dog Breed Development.” Cell Reports, 19(4), 697-708.
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